年配ドライバーも簡単に扱える端末を導入。あらゆる決済手段に対応し「選ばれるタクシー会社」に

光交通株式会社

近年はタクシー業界でもご多分に漏れず、キャッシュレス決済の導入が進んでいます。一方でドライバーの平均年齢が高い同業界では、「新しい決済端末を導入しても、従業員が対応できるかが心配」との声もよく聞かれます。

そうしたタクシー業界の構造的な課題を、「操作がシンプルな決済端末」を選ぶことで見事に解決したのが、京都のタクシー会社・光交通株式会社です。新たな決済端末を導入するまでの軌跡を、同社ドライバー・宮田龍治さんに聞きました。

光交通株式会社について

京都市を拠点に営業を展開するタクシー会社。車両数は約20台。同社では、メーター料金が5,000円を超えた場合に超過分が5割引となる「長距離割引」を採用し、好評を得ている。
宮田さんは、新設備の導入検討や、同僚への案内業務も担っている。

せっかくの決済端末が、使われないままに

もともと貴社では、どのような決済方法を採用していましたか?

お客さまからの支払いは、現金とクレジットカードに対応していました。一方、交通系電子マネーとQR決済には未対応でした。

また、クレジットカード決済には対応していたものの、いくつか問題が起こっていました。

クレジットカード決済時の問題とは?

使っていた決済端末が通信機能のついていないタイプだったため、ドライバーのスマートフォンと決済端末をBluetooth(ブルートゥース)でつなぐ必要がありました。当社では1台の車両を最低2人のドライバーが交代で使います。ですので、他のドライバーが使った後は、乗車のたびにBluetooth接続をしなくてはいけなかったのです。私自身はそれでも問題なく使えていましたが、当社には接続や端末操作がうまくできない年配ドライバーも多く在籍しています。

よく同僚から端末の使い方を聞かれ教えていたのですが、やはり普段からBluetoothをはじめ通信機能に接していない人にとっては、なかなか難しいようで。結果的に、決済端末を使えていたのはおおよそ50歳より下の人で、それより年代が上のドライバーの多くが、端末を使わずに現金のみで決済していたようです。

加えて、クレジットカードのご利用者控えが出ない点も課題でした。

そちらも、くわしく教えてください。

お客さまにお渡しするレシートは料金メーターから発行されるのですが、クレジットカードのご利用者控えに関しては、決済端末に印刷機能が付いていないため発行されませんでした。正確には、発行するには機械を設置する必要があり、当社はそれを未導入だったんです。したがって、お客さまから「控えは?」と聞かれた場合、「すみません、出ないんです」とお詫びしていました。

京都という場所柄もあってかビジネスでタクシーを利用されるお客さまも多く、「え、控えないの?」「なんで?」となることもしばしばありました。また年配のドライバーからは、「控えが出てこないから、ちゃんと決済されたか心配になる」との声も挙がっていて。

さらに最近では、街中のあらゆる場面にキャッシュレス決済が普及していることもあり、乗車時に希望される決済手段が使えないとわかると、乗車をためらう方や、ご乗車にならない方もいらっしゃいます。

そうした課題感を背景に当社では2022年の秋に、現状の端末を切り替え、新たにキャッシュレス決済端末(スマート決済端末、モバイル決済端末)「PayCAS Mobile」計15台を導入する運びとなりました。

数ある決済端末の中から、なぜPayCAS Mobileを選んだのでしょう?

理由として大きかったのが、クレジットカードから交通系電子マネー、QR決済までを、1台の端末で処理できる点です。今はお客さまがさまざまな決済手段を希望されますので、あらゆる決済を1台で行えるのはありがたいなと。

また端末のコンパクトさも、車内で扱うにあたり魅力でした。そしてなんといっても、年配ドライバーも難なく使える、操作の簡単さもポイントになりました。

端末の使い方に関する質問が激減した

PayCAS Mobileを導入してみての、率直な感想を教えてください。

実際に使ってみたところ、やはり操作もシンプルでわかりやすく、通信の待ち時間も少なくて、不便さを感じることなく快適に使えています。それと、クレジットカードのご利用者控えが決済端末からすぐに出てくるのが、やはりいいなと思いました。以前のように控えが出ないことを説明したり、何か言われた際に対応したりする必要が、一切なくなりましたね。

1回の決済には、どのくらい時間がかかりますか?

決済方法にもよりますが、おおむね1分くらいだと思います。

懸案だった、年配ドライバーをはじめとする同僚への普及率は、いかがでしたか?

はじめに、私からドライバーに端末の使い方を案内しました。といっても、説明することはそれほど多くなく、1人につき5〜10分くらいで済みましたね。

その後しばらくは、「今度の端末は使いやすい」といった声をよく聞きました。なんといっても端末自体にソフトバンクのSIMが入っていて、わざわざスマートフォンと接続する必要のない点が、みなさん楽だったのではないでしょうか。あとは画面の設計もシンプルで見やすく、多くの人が画面の指示に従うだけで自然に使えていると思います。導入から半年弱が経った今では、操作方法を質問されることはほぼありません。

中には端末を使っていないドライバーも一部いるかもしれませんが、おそらくはほとんどの同僚が、問題なく使えていると思います。

決済手段が増えたことに関しては、いかがですか?

やはり、お客さまが希望する決済手段に対応していないことを理由に乗車を断られることがなくなったのは、ありがたいですね。とくに市の中心部や駅前だと、キャッシュレス決済を希望される方が多くなりますので。QR決済や交通系電子マネーでしか払えない学生さんやお子さんにご利用いただくケースも一段と増えました。

他にも財布を探したもののすぐには出てこず、「もうキャッシュレスでええわ」と、手に持っていたスマートフォンを使って決済する方もいらっしゃいましたね。PayCAS Mobileを導入したことで、そうしたさまざまなニーズに、しっかり応えられるようになったなと感じます。

お客さまに選ばれることがモチベーションに 

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それと私どももそこまで多くの釣り銭を用意できませんので、1万円札での支払いが続くと、どうしても釣り銭が足りなくなることがあります。その結果、現金でのお支払いをお断りする形になることも。そのような時に代替の決済手段が限られると、お客さまから「こっちも払えないから、そっちでどうにかしてくれ」と言われかねません。対して今のようにあらゆる決済手段に対応していれば、「じゃあ、これで払うわ」と代替えの決済手段にもスムーズに応じていただけます。

一番手早く決済できるのは、どの決済方法ですか?

お客さまにあらかじめお金を準備していただける場合は現金決済が一番ですが、そうしたことは頻繁にはありませんので、それをふまえると一番早いのはQR決済ではないでしょうか。お客さまにバーコードを出していただき、こちらが金額を入力してスキャンすればいいだけですので。

ただ正直なところ、現金決済だとお客さまから「お釣りはいらないよ」と言っていただくこともあり、それがドライバーにはうれしくもあります(笑)。とはいえ、それは些末な話ですし、お客さまの利便性が高まることを考えれば、キャッシュレス決済はまったくイヤではありません。

PayCAS Mobileの導入は、光交通のタクシーサービスに、どのような価値をもたらしましたか?

先ほど申しあげたように、特定の決済手段に対応しないことで乗車機会を逃すことがなくなりましたし、ドアに貼っている対応決済手段のシールを見て乗っていただけるお客さまも増えたことだと思います。そのように、お客さまに選んで乗ってもらえるようになったことは会社としても大きなことですし、私たちドライバーのモチベーション的にもプラスになっています。

そして目線を広げれば、こういった便利なキャッシュレス決済がタクシー業界に広く普及することで、タクシーを利用したいと思うお客さま自体が増えればいいなとも感じています。

最後に、タクシードライバーとしての今後の展望をお聞かせください。

勤務年数を考えると、あってもまだまだ先の話ですが、将来的には独立して個人タクシーになる可能性もあります。個人タクシーといえば、現状ではキャッシュレス決済が充実している車両は多くなく、それを理由に「個人タクシーには乗らない」と言われるお客さまもいらっしゃいます。だからこそ、もし自分が個人でやることになった暁には、やはりキャッシュレス決済を充実させ、 “選ばれる個人タクシー”になりたいですね。

(2023年2月22日)