「スタッフ省人化」を目指したカラオケDX。精算機の“キャッシュレス化の壁”はどう越えたのか

カラオケマック

近年はカラオケ業界にも、DXの波が押し寄せています。

そんな中、カラオケサービスの“スタッフ省人化”を目指して歩を進めるのが、関東を中心に37店舗を展開するカラオケマックです。同チェーンでは数年前よりDXを本格化し、今ではスマホアプリを通じての予約や飲食物のオーダー、さらにはセルフレジによるキャッシュレス決済も可能となっています。

ただ、そこに至るまでには“壁”もありました。その一つが、セルフレジとキャッシュレス決済端末(スマート決済端末、モバイル決済端末)の連携です。同社は新たにPayCASの端末を導入することで、費用や手間を抑えての連携を実現。その内幕を、同チェーンでリーダーを務める砂野潤さんに聞きました。

カラオケマックについて

東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・静岡、宮城の都県に計37店舗(2023年3月現在)を構えるカラオケチェーン。Z世代をメインターゲットに据え、顧客ニーズに応えるDXのほか、“全店もちこみ自由”といった魅力的な施策を展開。運営会社は株式会社Airside。親会社は業務用カラオケ大手の株式会社第一興商。

メインターゲットに合わせたDX施策、その課題

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カラオケ業界にもDXの波が押し寄せていると聞きますが、貴社ではいかがですか?

正直なところ、以前は競合にDXで一歩も二歩も遅れていました。当社は若者世代、とくにZ世代をメインターゲットに据えています。若い世代のニーズを満たす、利便性の高い環境を整えるには、もはやデジタルの力は不可欠です。

そこで当社では、2019年頃より本格的にDXへ取り組み、専用スマホアプリの開発、キャッシュレス決済およびセルフレジの導入といったDX施策を進めてきました。将来的には、入店受付から飲食物の注文受付、会計までをすべて自動で行い、さらなる省人化を目指しています。

とはいえ、ここまでDXを進めるにあたり、課題にも直面しました。

どのような課題でしたか?

大きな一つが、セルフレジにキャッシュレス決済端末を連携できないことでした。もともとセルフレジは、現金でのお支払いのみに対応する形で2019年に導入しました。ただ、やはりクレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済にも対応する方が圧倒的に便利ですし、コロナ禍で世の中的にもキャッシュレス決済が浸透しました。そこで、有人レジに設置していたキャッシュレス決済端末を、セルフレジに流用できないかと考えたのです。

ところがその決済端末は、お客さま自身が操作するようには開発されておらず、セルフレジに取り付けることがどうしてもできないとのことでした。そんな経緯から、セルフレジに関しては現金払いのみの形で運用しながら、他に何かいい方法はないものかと模索しました。そうした中、お取引していたPOS会社からご紹介いただいたのが、PayCASのキャッシュレス端末でした。

なぜPayCASの端末を勧められたのでしょう?

まずは導入済みのセルフレジと連携できることが大前提としてありましたが、とりわけ大きかったのが、連携するにあたって大掛かりな開発をする必要がない点です。なぜなら、すでにそのPOS会社では、自社のセルフレジとPayCAS端末を連携した実績があったからです。実は他にも連携が可能な決済端末はありましたが、新たに連携開発が必要で、費用的にも時間的にも負担が大きいと感じました。

あわせてPayCASは、他の費用を抑えられる点も魅力でした。もともと使っていた端末の後継機種より、端末代金が安く、低コストで導入可能でした。

「タッチ決済」がイメージ以上に便利だった

そうした経緯を経て同社では2023年3月より、セルフレジを導入していた5店に、PayCASのPOS連動専用端末「Verifone P400」を導入しました。それにさきがけて有人レジのキャッシュレス決済端末の方も切り替えることになり、PayCASのプリンター内蔵型POS連動端末「Verifone V200c」を、2022年6月より順次導入していきました。

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PayCASの端末を導入したことで、レジのオペレーションはどのような形になりましたか?

お支払いは、まずお客さまには入室時に受け取ったバーコード付き伝票をフロントにお持ちいただきます。そして有人レジとセルフレジのどちらかを選び、そこでお会計していただく。どちらのレジでも、決済手段は「現金」「クレジットカード」「QR決済」から選べます。

私どものチェーンでは、フリータイムの終わる17時や20時、あるいは早朝5時のタイミングで退店される方が集中し、レジが混雑しがちです。そこでキャッシュレス決済やセルフレジを取り入れることで、混雑の緩和を図りました。しかし前述の通り、セルフレジでは当初、キャッシュレス決済が行えませんでした。今回、そこにもキャッシュレス決済を導入したことで、混雑緩和とレジ対応にかかるスタッフの負荷の軽減を、いっそう進められた形です。

キャッシュレス決済が可能になったことで、以前よりセルフレジ利用率も上がっている気がします。

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実際にキャッシュレス決済端末を運用してみて、何か気づいた点はありますか?

イメージ以上に便利だと感じたのが、クレジットカードを決済端末に触れさせるだけで決済できる「タッチ決済」です。従来の暗証番号入力や署名が必要ないので、本当に交通系ICカードと同じようにタッチするだけで決済できるようになりました(※)。これによりお客さまの利便性が大幅に上がっただけでなく、レジ業務の時間短縮にも明確につながっています。

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もう一つは、マシントラブルが減ったことです。セルフレジといっても現金のみの運用だとお金が詰まるなどでマシンが止まり、スタッフが対応するといった業務がどうしても発生します。レジ業務にかかる人手をなくすことが本来の目的なのに、そうしたトラブルに人手をとられてしまうのは、ある意味本末転倒ですよね。セルフレジにもキャッシュレス決済を導入したことで、そうしたトラブルも少なくなりました。

※ 支払額が一定額を超え、暗証番号入力または署名が必要になる場合もあります。

弱点だったDXが今では“強み”になりつつある 

キャッシュレス決済端末の導入が、お店にもたらしたものはありますか?

このような効果が合わさった結果として、スタッフからは「会計にかかる時間が短くなり、会計混雑時の待ち時間も少なくなっている」との声が上がっています。このようにDXが、お客さまの利便性や快適性の向上につながっていることは、運用側として非常にうれしいです。もちろん、スタッフの負担が軽くなっている点もありがたいですね。

なおスタッフのオペレーションでいえば、レジ締め業務にかかる負荷も減っています。やはり現金のやりとりを手渡しで行うと、集計の際に金額のズレが少なからず生じてしまいます。そのズレが積もれば金額的にもロスになりますし、スタッフが何度も確認作業を行わねばならず、その負担も決して小さくありません。

キャッシュレス決済やセルフレジの導入で、現金をやりとりする機会が減り、そうしたロスも大幅に改善できています。

一連のDXにより、貴店ではどのようなサービスが可能となりましたか?

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専用アプリができたことで、スマホアプリを通じての予約が可能になり、来店回数に応じて割引を受けられる全店横断型の会員システムもアプリで管理できるようになりました。予約に関しては、当日や直前での予約も可能です。また入店後は、アプリからフードやドリンクをオーダーできます。そしてお話ししてきたように現金、クレジットカード、QR決済とさまざまな方法で会計でき、かつ有人レジとセルフレジを選んでいただけます。

かつては競合他社に遅れを取っていたDXが、今では当社の強みになりつつあるのかなと感じています。

この先は、どのような店舗運営を目指しますか?

まずは現在5店舗に設置しているセルフレジを、他店にも順次拡大していきます。

そして長期的には、オペレーションスタッフの省人化を進めていきたいですね。それには受付から会計までを無人で行える新機が必要で、現在デモ機の導入の準備を進めているところです。そちらに関してもキャッシュレス決済端末との連携が一つのカギになるので、今回のPayCAS端末の導入は、省人化に向けた確かな一歩になったと感じています。

今後もオペレーションの省力化と人件費の削減、そして何より若年層のお客さまのニーズをダイナミックに満たすカラオケ店を目指し、チャレンジしていきたいです。

(2023年3月22日)