公共スポーツ施設のレジ周りをデジタル化。集計業務が効率化し、他の7施設にも一斉導入

公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団

キャッシュレス決済対応の店舗が増えている昨今ですが、公共のスポーツ施設でキャッシュレス決済に対応しているところは、そう多くありません。

そのような中、キャッシュレス決済端末(スマート決済端末/モバイル決済端末)とPOSシステムをあわせて導入し、業務の大幅な効率化を果たしたのが、宇都宮市体育館です。管理運営を行う公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団では、同施設での導入の成功を受け、管理する他の7施設にも同じシステムを導入する運びとなりました。

なぜ決済に関するDXを、同財団は一挙に進められたのでしょう。プロジェクトに携わった板山さん、遠藤さん、藤田さん、戸室さんの4人の職員に、お話を聞きました。

公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団について

体育館や運動場など、宇都宮市の21の体育施設を運営・管理する。財団のもつ機動性や専門性を活かしながら、市民が幅広くスポーツ活動に親しむ機会を提供し、健康で豊かな市民生活に寄与している。前身は、1981年創立の財団法人宇都宮市体育文化振興公社。

他の公共施設のデジタル化に衝撃を受ける

もともと宇都宮市体育館では、どのように決済を行っていましたか?

板山さん:お客さまからの支払いは、現金のみに対応していました。POSシステムも未導入だったので、一日の最後に行うレジ締めの際は毎日レジから売上記録のレシートを出力し、それをコピーに取り、テープで紙に貼り付けてファイリングしていました。もちろん、現金を手で数えて何度も確認するといった業務も、日々行っていました。

utunomiya_03_itayama公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団 板山さま

遠藤さん: 最近はコンビニエンスストアをはじめ、いろいろなところでキャッシュレス化が進んでいるだけに、お客さまからは「現金しか使えないんだ」「不便ですね」といった声も聞かれていました。

そうした状況を受け、当財団もDXを行わなければと、まずはレジ周りのデジタル化を進める運びとなりました。2022年6月に、ここにいる4名を含むプロジェクトチームが立ち上がり、普段の業務と並行してデジタル化に取り組むことになりました。

utunomiya_04_endo公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団 遠藤さま

レジ周りをデジタル化するにあたり、導入するシステムはどのように選びましたか?

藤田さん:正直、最初は何から始めればいいか、手探りの状態でした。ひとまず市内の公共施設をリサーチしたところ、ある施設ですでにPOSシステムとキャッシュレス決済端末を導入していることがわかりました。そこでさっそくお話を聞きに行ったのですが、そこで衝撃を受けたんです。

そちらの施設ではPOSレジを予約システムにAPI連携し、予約システムを通してパソコン上で簡易なボタン操作をするだけで決済を完了させていました。これならレジを打たなくていいので、打ち間違いも発生しません。

そこで当財団でも、将来的にPOSと予約システムをAPI連携することを前提に、端末選びを進めました。何社か検討し、システム連携のしやすさをはじめ総合的に判断した結果、POS端末にblaynの「T2mini」を、そして決済端末にPayCASの「Verifone P400」を選ぶ形になりました。

そうして2023年2月より、宇都宮市体育館にT2miniとVerifone P400を2組導入し、運用を開始しました。

utunomiya_05_fujita公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団 藤田さま

POS端末「blaynのT2mini」と、決済端末「Verifone P400」の連携は、どのように行いましたか?

戸室さん:両端末には連携のスキームが確立されていて、とくに大変なことはありませんでした。blaynのコールセンターに電話して、指示を受けながら操作を行う形で、15分ほどで連携は完了しました。

utunomiya_02_tomuro 公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団 戸室さま

日々の集計作業にかかる時間が、大幅に短縮

対応する決済方法は?

遠藤さん:クレジットカードと、Suicaなどの交通系電子マネー、そしてPayPayをはじめとするQRコード決済です。基本的に、すべての決済方法に対応できる形です。

決済を行う際の、一連のオペレーションの流れを教えてください。

板山さん:窓口にはレジが2か所あり、左が宇都宮市体育館内の施設をご利用する方、右が他の管理施設を利用する方のレジになります。

決済業務は、まずお客様にご利用内容を聞き、料金を案内します。そして決済方法を伺い、クレジットカードか交通系電子マネーなら、Verifone P400で決済を行います。QRコード決済の場合のみ、T2miniでお客様のバーコードを読み込みます。

QRコード決済は、小型の専用端末を別に導入し、T2miniの方はカウンターの下に隠す選択肢もありますが、当施設ではT2miniもカウンターに置く形にしました。T2miniもVerifone P400も端末が大きくないので、場所をとらず、圧迫感やゴチャゴチャした感じがなく、すっきりとしています。

遠藤さん:なおT2miniはもともと飲食店用の端末ですが、当施設では「メインアリーナの一部利用」「サブアリーナの全面利用」「トレーニングルーム利用」といった利用区分をメニュー設定に当てはめて使っています。それでとくに不便はなく、問題なく決済を行えていますね。

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実際に新しいシステムを運用してみて、業務はどうなりましたか?

戸室さん:日々の集計作業にかかる時間が、かなり短縮されました。前述の通り以前は毎日、売上記録のレシートをコピーして紙に貼り付けてファイリングしていましたが、POSによって記録がパソコン上に記録されるため、ファイリング作業が必要なくなりました。

藤田さん:また当財団は指定管理者なので、施設利用の記録を市に報告する必要がありますが、そのための業務もだいぶ効率化されました。以前はファイルと照らし合わせて数字が正しいかチェックしていましたが、今はパソコンの管理画面ですべて見られるので、その必要がありません。また、集計の数字はいつでもパソコン上で見られ、検索なども行えます。

戸室さん:決済端末自体の読み込みも速く、決済オペレーションにかかるお客さまと職員双方の時短にもなっています。

お客さまの反応は、いかがですか?

遠藤さん: お客様からは「すごい!」と驚きの声をいただくこともあります。

トレーニングルーム利用者のキャッシュレス決済比率の高さを、キャッシュレス決済を導入して気づきました。当体育館にはトレーニングルームも併設しているのですが、体育館全体のキャッシュレス決済比率はまだ20%ほどであるのに対し、トレーニングルームのお客さまに限れば約40%にのぼります。携帯電話だけを持って、できるだけ身軽にジムを利用したいといったお客さまが多いのでしょう。

同じシステムを、他の7施設にも一斉導入

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貴財団では、宇都宮市体育館以外にも運動場などいくつもの体育施設を管理しています。それらの施設では、デジタル化は予定していますか?

戸室さん:実は宇都宮市体育館での先行運用を受け、2023年9月より他の7施設にも、同じPOSレジ&決済端末を計8組導入します。他の施設のメニュー画面を、本部の管理画面から一元管理でき、複数施設を管理するのにも非常に便利なシステムだと感じています。

公共施設でのデジタル化がなかなか進まない現状もある中で、(公財)宇都宮市スポーツ振興財団では、なぜレジ周りのデジタル化を一挙に進められたのでしょう?

戸室さん:まず大きいのが、当財団のトップが率先してデジタル化を提唱している点です。やはりDXをすすめるにあたっては、組織全体の意志として進めることが重要なのかなと感じます。

板山さん:また導入に際して端末の複雑な設定や操作がいらない点や、端末の営業担当の方にいろいろサポートいただいたことも、後押しになっています。PayCASの営業の方には、状況に応じてかなり柔軟に対応していただき、助かりました。

レジ周りのデジタル化に関して、今後どのような展望をもっていますか?

藤田さん:キャッシュレス決済の利用率が増えれば増えるほど、オペレーション面での利便性もどんどん高まるので、利用率をなんとか上げていきたいです。経済産業省が目指す「2025年までに4割」というのが、当座の目標になります。

それと、現状ではまだ予約システムを作れておらず、POSシステムと予約システムのAPI連携が果たせていません。そちらも、機を見て進めていきたいです。

最後に、今回のデジタル化の取り組みを、総括いただけますでしょうか。

板山さん:市がデジタル化を推進していることもあり、この先もさまざまな取り組みを行っていくことになるでしょう。それに先駆けて、レジ周りのデジタル化を財団として主体的に進められたことは、貴重な先鞭になったと感じます。少なからず、苦労もありました。この経験を活かし、今後も職員のため、そしてお客さまのために、デジタル化に鋭意取り組んでいきます。

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(2023年8月17日)